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2019.05.11

内痔核手術後の出血に対しての対処法

今回は、晩期出血を起こした時の対処方法です。どちらかというと私たち医師側が行う処置についてのお話です。

 前回お話したように、晩期出血は痔核根治術だけでなく、輪ゴム結紮法でも起きる可能性があります。内痔核を外科的に治そうとすると、どうしても避けては通れないことです。

痔核根治術の場合はその頻度は約1%です。しかし、この晩期出血が起きた場合は、速やかに止血処置などの対応をする必要があります。そのことに対して私たちは万全の体制を常にとり、晩期出血に対してしっかり対応できる技術を持っていなければなりません。

 患者さんが出血だけでなく、術後の不安があった場合に、直ぐに連絡が取れるように体制をとる必要があります。渡邉医院は、入院患者さんがいらっしゃるので、夜夜中でも必ず当直がいるので、渡邉医院に電話をしてもらうと、24時間必ず連絡が付きます。また渡邉医院に連絡があると、必ず私に連絡が付くような体制をとっています。ですから、私は24時間オンコールです。

やはり手術後出血だけではなく、様々なことが起きる可能性があります。何か患者さんが不安に感じたときに、必ず連絡が取れる体制は最低限取っておく必要があると思います。

 電話で患者さんと話すことで、今、どんな状態かはある程度分かります。出血に関しては、術後何日目か、どんなふうに出血しているか、連絡してくれるまで何回出血があったかなどを聴くことで緊急性が判断できます。

 痔核根治術や輪ゴム結紮法で、内痔核の根部の動脈からの出血を起こした場合は、頻回の下痢状の出血です。このような状態であれば、直ちに診療所に来てもらう必要があります。動脈からの出血なので、自然に止まることはありませんし、頻回にしかも多量に出血するので、血圧も下がってきます。急いで家族の人に車で診療所に連れてきてもらうか。場合によっては救急車で搬送してもらってもおかしくない程度の出血をします。絶対に自分で運転しては来ないでください。

さて、出血で診療所に来られた場合、まずは、患者さんの全身の状態を見ます。顔色、歩いてこられた場合はその歩き方など、止血の処置をする前に、血管確保して点滴をしなければならない状態かをすぐさま判断します。必要と判断した場合は、まずは血管確保をして点滴をします。その後に、出血の具合、どの部分から出血しているのかを確認していきます。

患者さんの全身状態が落ち着いている場合は、まずは診察ベッドに横になってもらい、診察していきます。まずは肛門指診です。出血している場合は、肛門指診の際に指を入れたときに指に血がついてきたり、指と肛門の隙間から血が流れてきます。次に肛門鏡で診察していきます。手術をして間がないので、肛門鏡を挿入する際に痛みが伴いますが、軟膏をしっかりつけ、ゆっくり挿入していくことで肛門鏡を挿入して、出血の具合を観察することが出来ます。肛門鏡は必ず筒型の肛門鏡を挿入して観察します。内痔核の手術をしての出血では、内痔核の根部は肛門の外側から約3㎝のところです。ですから、筒型の肛門鏡を挿入することで、根部からの出血があった場合、肛門鏡で出血部分を圧迫してとりあえず止血でき、次の準備ができるからです。

ただ、内痔核の根部からの動脈性の出血の場合は、来院されるまでに、直腸内に多量の血が凝血塊として溜まっていることが多いです。ですから、出血部分をしっかり十分に観察するためには、直腸内にある凝血塊を出してしまわなければなりません。そうしないと、止血処置をしようとしても、直腸の奥の方から凝血塊が次から次へと出てきて、出血部位を確認することができないからです。ただ、この直腸にある多量の凝血塊を取り除く際に注意が必要です。直腸内に凝血塊がある間は意外と血圧は保たれていくことが多いのですが、直腸内の凝血塊を出すときに、やはり下痢状に出てくるので、この際に血圧が下がってしまうことがあります。患者さんの状態を診ながら行わなければなりません。

ある程度直腸内の凝血塊が取り除けて、出血部位を確認出来たら次は止血処置に入ります。

渡邉医院では手術もそうですが、止血処置する際も局所麻酔で行います。十分に手術をするときと同じように麻酔をかけることで、肛門を十分に広げることが出来、止血処置が容易になります。

さて止血処置ですが、まずはガーゼを直腸に詰めて、直腸の奥のほうに残っている凝血塊が流れ出てこないようにするのと、ガーゼを詰めることである程度圧迫することが出来るので出血の程度が減ってくれます。場合によってはガーゼを詰めずに止血処置を行うこともあります。

さて、止血ですが、バイポーラといって凝固止血器があるのですが、内痔核の術後の動脈からの出血ですと、バイポーラによる凝固止血では十分に止血することはできません。ですから糸で出血部分を結紮して止血する必要があります。

京都に帰ってきたころは、出血している内痔核の根部に糸をかけて止血しようとしていました。ただ、いきなり、根部に糸をかけようとしてもなかなか難しいことのほうが多いです。

動脈から出血している場合は、出血している部分に糸をかけようと思ってもなかなか出血部位の確認して、思ったところに糸をかけられないことがあります。どんどんあふれてくるように出血してくることもあります。ある程度出血が治まってきている場合にはいきなり出血部位に糸をかけて止血することは可能ですが。では今はどうしているかですが、まずは出血している部分より外側、肛門の外側に近いところから糸をかけていきます。この糸を支持に段々奥のほうに、出血している部分へと糸をかけていきます。手前の糸を引っ張ることで、出血がある程度コントロールでき、出血の量が減ってきます。このように手前から次第に出血部位に、さらに出血している部分よりも奥に糸をかけて、それぞれを結紮していくことで止血することが出来ます。このようにいきなり、出血部分に糸をかけて結紮して止血しようとせずに、手前から糸をかけ、最終的には出血部分より奥に糸をかけ、それぞれを結紮することで止血が可能となります。

止血処置が終わった後は、病室で安静にしてもらいますが、最低1時間は休んでもらっています。出血の量が多かったり、血圧が低かったりした場合は1日入院してもらうこともあります。

後は患者さんの精神的なフォローです。術前から晩期出血のことはお話しますが、いざ自分がなると、その精神的なダメージは大きいです。どうしても出血したこと、また再度止血処置を行ったことで、精神的なダメージを受けます。そのダメージをしっかりとフォローしていかなければなりません。その一つは、止血処置をした後はもう一度の出血はまずないこと。また止血処置をしたとしても、傷の治りが振り出しに戻るわけではないこと、傷は全体的に治っていて、出血した部分は一点だけ、出血したからと言って振り出しに戻って、一から出直しではないことなど、しっかりとした精神的なフォローが必要です。

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