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2019.06.29

臨床肛門病学会の教育セミナーを終えて。

 今回、臨床肛門病学会がWEBによる教育セミナーを開催しました。テーマは「痔核の手術・結紮切除」でした。

 
この内容に入る前に、お話したいことがあります。これまでも大腸肛門病学会でも教育セミナーが開催されてきました。ただ、開催地が東京であったり横浜であったりしてなかなか開業しているものにとっては参加することが出来ませんでした。セミナーは朝の9時からだいたい5時間程度の1日がかりのものです。
 
渡邉医院は有床診療所です。どうして入院されている患者さんがいらっしゃるので、学会や研究会に参加する際も、朝、入院患者さんの診察をしてからの参加になります。早くても午後からの参加です。でもやはり、肛門科を専門にしている以上、肛門科専門にされている先生方の話や手術手技などを診ることはとても大事ですし、勉強になります。これまでも大腸肛門病学会に発表するためには、学会が開催されているあいだ、患者さんに何か起きることが無いように、そして入院患者さんが皆さん退院された状態で学会に参加していました。
 
やはり、開業している先生方が参加して、しっかり勉強ができ、診療や手術の技術などを向上できるような企画を練って欲しいと思います。そういった中、今回はWEBによる教育セミナー、東京などにいくことなく、自宅での参加が出来、とてもよかったと思います。今後もこういった企画をして欲しいと学会や研究会にはお願いしたいと思います。
 教育セミナーに参加して
 
さて本題の「痔核の手術・結紮切除」の教育セミナーに参加して感じたことをお話したいと思います。
 
最近はジオンという痔核硬化剤による四段階注射法での治療が広がってきています。講師の先生方の講演が終わった後の質問で、「最近はALTA療法(ジオンによる四段階注射法による痔核硬化療法)による治療によって、結紮切除術の範囲が狭まったのではないか?」という質問が出ていました。これは、まったくジオンによる四段階注射法による痔核硬化療法(ALTA療法)を理解しておられない質問ではなかったかと思います。どちらかというと、ALTA療法の方が適応を厳密にして行っていかなければならない治療方法で万能の治療方法ではありません。なんでも間でもジオンによるALTA療法で内痔核が治るわけではありません。それに対して結紮切除術はどんな内痔核でも対応できるオールマイティな治療方法です。ですから、肛門科を専門に診療、治療を行う以上、結紮切除術をしっかりと行うことが出来ることがとても大事なことだと思います。
 
こういったことから、今回3人の講師の先生方の手術方法を動画で見ることができて、とても勉強になりました。
 結紮切除を行う際の二つの注意点
 内痔核に対して結紮切除術を行う際には、二つの点に注意して手術を行わなければなりません。
 一つ目の注意点
 出血
 
 
まず一つ目は、手術を行った早期に起きることに対しての対処です。それは術後の出血と術後の疼痛管理です。出血に関しては二つの出血があります。それは術後早期に起きる早期出血と、術後710日頃に起きる晩期出血です。このことに関しては以前お話ししたことがあります。早期の出血はやはり手術手技と術中の観察によるところが多いと思います。手術中は十分な視野をとって、十分に止血処置を行う。特に内痔核を剥離した後の根部結紮。そして内痔核を切除した後の断端からの出血がないかどうかの確認。また内痔核を剥離した創縁や創面からの出血を確認してしっかりと止血した後に半閉鎖していくことなどで、早期出血は回避できると考えています。もう一つの晩期出血は、なかなか難しい問題です。晩期出血を起こした際に止血処置をする際にどのように出血しているかを観察すると、一つは、根部結紮した部分が脱落した後動脈からの出血であったり、脱落した周辺の傷からの出血があります。したがって結紮した糸はすでに脱落しています。もう一つは、根部結紮した糸が残っている場合です。内痔核を剥離して根部結紮した後切除するのですが、その部分が壊死して脱落するのですが、まだその部分も残っていて糸との間に何らかの炎症を起こしての出血があります。こういった場合は、余裕があれば、糸をとって、壊死部分も取り除いてから再度結紮して切除しています。この場合は、基礎疾患に糖尿病があったり、肝臓の具合が悪かったり、また貧血がある患者さんに多い印象があります。したがってこういった基礎に疾患のある患者さんは術後の経過をいつも以上に注意しなければならないと思います。
 術後の痛み
 
術後の痛みに関して、手術で注意することは、十分に内痔核を形成する静脈瘤を剥離して、粘膜と静脈瘤だけにするぐらいの気持ちで剥離して内の根部を結紮することが大切だと考えています。靭帯など周りの組織から十分に剥離せずに、大きな塊として根部を結紮すると、術後の痛みが強くなる印象です。また、肛門の括約筋のしまりが強い人は術後痛みが強いという結果が出ています。局所麻酔をした後、十分に括約筋の緊張をとるようにストレッチをすることも術後の疼痛を和らげる方法だと考えています。
二つ目の注意点
 
さて、もう一つは手術を行った後、長期にわたっての問題です。それは術後の狭窄です。内痔核の手術をして肛門が狭くなってしまうことです。術後の出血はとてもいやなことですが、ただ、出血が起きた際にしっかり止血処置をすることで、その後の経過には問題はありません。ただ、術後の狭窄は、排便時の支障になり、出血とは違ってずっと続く症状ですし、問題点です。術後の肛門狭窄に対して肛門を広げる手術もあります。ただできればそういった手術をしなくてもすむ手術を一番最初にすることが重要になります。患者さんにとってもう一度手術はとても辛いことですし、避けなければならないことです。
 
ではどうしたら狭窄を解除できるかです。内痔核の手術箇所が1箇所の場合はそれほど問題はありませんが、2箇所以上とくに3箇所以上に結紮術を行う時に注意が必要です。
 
まずは、内痔核を根部まで剥離していく際に、必要以上に肛門上皮を切除しないことです。肛門上皮をたくさん切除しまうことで、狭窄を起こしてしまう可能性が高くなります。必要かつ十分な傷で内痔核を剥離していくことが大切です。また、3箇所の手術を行う際に、根部を結紮する高さが同一面状になってしまうと、狭窄を起こしてしまう可能性があります。内痔核の根部を結紮する高さを変えて、結紮した部分が同一面上にならないようにすることも狭窄を回避するために必要な手術手技だと思います。
 
少し長くなってしまったので、今回はこのへんにしておこうと思います。続きは次回に回します。

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