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2020.06.19

より有効な治療方法にするために必要なこと。

 こんな質問を受けたことがあります。
 自分で医学雑誌で調べてこられたのですが、こんな感じの内容でした。「パオスクレーによる痔核硬化療法の効果は3ヶ月~1年。」と書かれていた。パオスクレーでの痔核硬化療法をしてもすぐに再発してしまうのではと言った質問です。でもこれだけの内容では、ここに書かれていることが正しいかどうかを判断することはできません。この一文にはパオスクレーによる痔核硬化療法が有効であるかどうかを判断する内容が書かれていません。

 まずはどんな内痔核に痔核硬化療法をしたかです。
 例えば内痔核の程度が第Ⅰ度なのか第Ⅱ度なのか、または第Ⅲ度以上の内痔核なのかが分かりません。ただパオスクレーによる痔核硬化療法の適応は第Ⅱ度以下なので、ここでの記述に対して痔核硬化療法が第Ⅱ度以下だとしましょう。
 でもまだまだ足りません。内痔核がどんな症状だったのかです。例えば出血を主訴とする内痔核だったのか?もしくは排便時に少し脱出してく内痔核だったのか?または両方の症状があったのかなど、どんな症状の内痔核に対して痔核硬化療法をしたのかわかりません。パオスクレーによる痔核硬化療法は出血する内痔核を治すのに一番有効です。第Ⅱ度程度の排便時の脱出にも効きますが、やはり脱出する内痔核より出血が症状の内痔核に有効です。したがって、痔核硬化療法を行った内痔核がどんな内痔核だったのかを明らかにする必要があります。

 では第Ⅱ度以下の内痔核で主に出血を主症状とする内痔核に痔核硬化療法を行た結果だとしましょう。でもまだまだ足りません。
 というのは痔核硬化療法を行う時にやはりパオスクレーという痔核硬化剤を
1か所の内痔核にどの程度の量を注射したかが問題となってきます。
 パオスクレーによる痔核硬化療法の治験をまとめた論文をみてみると、やはり1箇所の内痔核に対して5ml以上注射した場合と5ml未満では注射の効果に大きな違いが出てきます。1箇所の内痔核に対してパオスクレーが5ml未満の場合、その効果は50%を下回ってしまいます。ですからパオスクレーによる痔核硬化療法で有効に治療をするためには1箇所の内痔核に5ml以上のパオスクレーを適切に注射する必要があります。したがって、十分なパオスクレーの量を適切に注射した結果なのかどうかが重要になってきます。

 さて、第Ⅱ度以下の出血を主な症状の内痔核に適切に1箇所に対して5ml以上のパオスクレーを注射したとしましょう。その結果だったらこの「パオスクレーによる痔核硬化療法の効果は3ヶ月~1年。」の記述は正しいのでしょうか?

 これでもまだまだ足りません。何が足らないかと言うと、痔核硬化療法で治った患者さんのその後の排便状態はどうだったかです。
 というのも内痔核が発症する原因の一番は排便時に強く怒責することです。
例えば便秘だったり、また反対に下痢でも具合悪くなります。便秘でも下痢でも、排便時に強く怒責する、強く力むことで内痔核が発生し、悪化していきます。したがって内痔核の治療で一番大事なことは、内痔核が発症する原因となる排便の状態を改善することです。

 ですから、パオスクレーによる痔核硬化療法を施行した後の患者さんの排便の状態がどうであるかはとても大切な要素になります。パオスクレーによる痔核硬化療法で内痔核が治ったとしても、排便の状態が改善されておらず、排便時に強く力むことが続いていればやはりそのことで再発してしまいます。たとえ手術をして治したとしても排便の状態が悪ければ再発してしまいます。
 なにも無かったところから排便の状態が悪くて内痔核は発症してきます。一端治ったとしても原因があればまた内痔核が出来てしまいます。このように治療をした後のその後の排便などが改善されているか?その原因に対してしっかり治療をしていたかも大切な要素になります。

 したがってパオスクレーによる痔核硬化療法が本当に有効なのか?3ヶ月から1年の効果しかないのかは、こういったいろんな要因を検証していかなければなりません。

 例えば第Ⅰ度の内痔核で出血を主な症状の内痔核に対して1箇所の内痔核に適切に5ml以上注射をした。そして内痔核の原因となる排便の状態を改善した結果、再発するかしないか。また再発するのならばそれまでの期間はどうだったのかを検証する必要があります。
 このように検証すると、例えば同じように第Ⅰ度の内痔核で出血を主な症状の内痔核に対して1箇所の内痔核に適切に5ml以上注射をした。その後内痔核の原因となる排便の状態が改善されずに、どうしても強く力んで便を出すことが続いた。その場合、再発がどうであったか。再発までの期間はどうだったかを検証すると、治療した後の排便の調整が上手くいった患者さんと上手くいかなかった患者さんを比較することができ、治療後の排便の調整が大事であることが分かります。
 こういったように、細かくいろんな場合を検証して、それぞれを比較することでいろんなことが分かってきます。そうしたことを積み重ねていくことで、例えばパオスクレーによる痔核硬化療法を行った後再発しないで治すには何が必要なのかが分かってきます。こういった科学的な検証を治療方法ごとに行い、その検証したことを元に、それを生かしてそれぞれの治療を有効な治療方法にしていく。こういったことがとても大切なのだと思います。ですから「パオスクレーによる痔核硬化療法の効果は3ヶ月~1年。」であればどうして3ヶ月から1年でまた再発してしまうのかを検証して、その原因を見つけ、そのことを改善することでパオスクレーによる痔核硬化療法は今以上に有効な治療方法になっていくのだと思います。全ての治療にこのことは通じると思っています。

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