
これまで何回か、私の好きな歌を紹介してきました。
私にとって歌ってなんだろう?歌は私にどんな影響を与えただろうと考えてみました。
そんな時すぐに頭に思い浮かんだことがありました。大げさかもしれませんが、歌が私の人生に大きな影響を与えた経験です。
私が高校1年生の時です。小さいころからスポーツがとても好きで、学校には体育と部活をしにいくような毎日でした。自慢ではないのですが、中学のころ、体育の先生が通知簿に大きな字で「スポーツマン。それは君だ!!」なんて書いてもらったこともありました。高校のときも、「君ならどの運動部に入っても一流になれるよ。」とも言ってもらってうれしかったことを思い出します。
そんな時、中学3年ごろから膝を悪くしていたのですが、高校1年のとき完全に壊してしまい、1年以上杖をついての生活になりました。好きだったスポーツもできずに、そのころは若かったこともあって、全然周りがみえませんでした。自分がしてしまったことなのに、「なんでこんなことになってしまったんだ。こんなスポーツができない足なんかなくなってしまえ。」と結構あれて両親を悲しませていました。
こんな私の心を変化させたのが、父の「おまえの痛みや悔しさは俺にはわからない。でもおまえはどうなんだ。おまえのことで悲しんでいる母親の気持ちはわかるのか?!」という一言。また、このことがあった後、毎週日曜日に、父は仕事が終わった後、嵐山へボートを漕ぎに連れて行ってくれました。雪の日もボートを漕ぎに行ったような記憶があります。ボート乗り場にいる船頭さんにも顔を憶えてもらいました。
ボートを漕いだ後は、今まであまり話をしたことがなかった父と昼食をたべながら話をしたことも私に影響を与えたのだと思います。
こんなとき、詳しいことは忘れてしまいましたが、円山公園の音楽堂で開催された祭典に出演した佐藤光政という歌手が歌った「聞いてくれわが心の歌」(山川啓介作詞、いずみたく作曲)を聴いて、今までもやもやしていたものがすっと取り除かれ、今まで何をしていたんだろうと感じる経験をしました。
歌の歌詞は
生きるのに 疲れ果て 世の中を恨んだ時も
歌だけは 励ました 笑える日が来ると
さあ 聞いてくれ 僕のこの歌を
何もほかにはないけど 僕の悲しみ
そして喜び この心込めた歌を
人が皆 背を向けて 孤独を噛みしめた時も
歌だけは 僕といた 恋人のように
さあ 聞いてくれ 僕のこの歌を
何もほかにはないけれど 僕の過ち
僕のあこがれ この心込めた歌を
僕の名を 忘れても 君の心の片隅で
いつまでも 歌えたら それで幸せさ
さあ 聞いてくれ 僕のこの歌を
何もほかにはないけれど 僕の涙と
そして笑いと この心込めた歌を
歌が私の胸に響きました。自分の胸から熱いものが体全体に広がっていく、そっして脊髄を通って脳に逆流するような感覚、そして思わず涙が出てきたことを憶えています。
この経験をしたあと、周りが見えるようになり、自分と同じように杖をついて歩いている人や、杖などの装具を販売している店などが目にとびこんでくるようになりました。今までも見ていたはずなのに見えていなかった。自分の中にそういった意識がなく、自分のことで精いっぱいだったのだと思います。この歌をきっかけに、今までとは違った世界が見えるようになり、自分の視野が広がりました。歌が私を変えました。
悲しい時、怒りが込み上げてきた時、そして喜びの時。歌は、さまざまな感情を表現したり、いろんな場面で歌われます。でもどんな時も下を向いている顔を持ち上げてくれます。後ろを向いている心を歌は前を向かせてくれます。そして喜びを分かち合わせてくれる。
また、歌はさまざまな感情を湧き起こしてくれたり、歌を聴いている時にいろんな考えを頭に浮かばせてくれたりします。
映画やドラマなどでも、挿入される歌や音楽がその場面場面で感じる感情を盛り上げ内容をさらに豊かなものへとしていきます。歌はそういった力をもっていると思います。