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2018.02.07

裂肛及び便秘における男女差の検討(第67回日本大腸肛門病学会)

 今回は、裂肛と便秘について発表した内容を紹介します。
 裂肛(切れ痔)の原因は便秘や下痢などの排便の状態が悪いことが原因となります。特に便秘によって排便時のい肛門に傷がついて痛みが出る病気を裂肛(切れ痔)といいます。裂肛は転んで怪我をするのによく似ています。便の状態で肛門に傷がつき、痛みが出る。それを繰り返すことによってだんだん慢性の裂肛になっていきます。やはり裂肛の治療は、裂肛そのものを治すことも重要ですが、裂肛の原因となる排便の状態を良くすることが重要になります。
 今回はその裂肛と便秘について紹介します。

発表内容
 裂肛の原因の一つに便秘があります。そこで、当院における便秘症例と裂肛に関して、男女の差を比較検討しました。
 平成7年12月から平成24年4月までに受診した総患者数は25928人、男性13163人、女性12765人、平均年齢は51.9歳。そのうち、カルテに便秘症という診断名がついた患者は3196例、男性1093例、女性2103例、平均年齢56.9歳。裂肛は4823例、男性1919例、女性2904例、平均年齢43.1歳。裂肛手術症例は1480例、男性549例、女性1480例、平均年齢42.1歳で、これらを対象としました。
 方法は、対象をA群からI群まで10歳間隔に9群に分け、便秘症、裂肛症例、裂肛手術症例に関して男女の差を比較検討しました。
 患者総数に関しては、男性対女性は1:1と差は認めず、さらに各群とも男女差は認めませんでした。  便秘症例では、男性対女性は1対1.9と女性は男性のほぼ2倍でした。また、男性では年齢とともに増加しH群でピークであったのに対して、女性では、二峰性となり、C、D群20代30代でまず最初のピークを認め、それ以降は男性と同様に年齢とともに増加し、H群で二つ目のピークを認めました。
 裂肛症例では男性対女性は1対1.5と女性に多く認めました。男女ともほぼ同じ傾向を認め、男性ではD群、30歳代にピークを認め、女性ではC群、20歳代にピークを認めました。
 裂肛手術症例では男性対女性は1対2.7と女性に多く認めました。裂肛症例と同様にC群、20歳代にピークがあり、年齢とともに漸減しました。男性では、E群40歳代にピークを認め、年齢と共に漸減しました。
 裂肛症例と手術症例を比較すると、女性では裂肛症例と手術症例のピークは一致して20歳代にピークがあるのに対して、男性では手術症例がE群40歳代とピークがややずれる傾向を認めました。
 便秘症例と裂肛症例及び手術症例を比較してみると、女性ではC、D群で便秘症例、裂肛症例、手術症例が一致するものの、それ以外では、男女とも年齢とともに便秘症例が増加するものの、裂肛症例、手術症例と一致しませんでした。
 まとめです。
 便秘に関しては、女性のC群、D群を除くと男女とも年齢とともに便秘症例は増加しました。このことは、加齢とともに腸管の蠕動運動の低下や、食事の摂取量、運動量の減少など、男女ともに共通した原因によるものと思われ、女性のC群、D群での便秘症のピークを認めるのは、女性特有の原因だと考えます。黄体ホルモンなどによる原因や、出産、子育てなどの社会的な影響もあると考えます。
 また便秘と裂肛の関係をみると、女性のC群、D群を除いて、年齢とともに便秘症例は増加していくのに対して、裂肛症例、手術症例は増加せず一致しません。このことは、裂肛の原因を考えるうえで、便秘だけでなく内肛門括約筋の緊張の強さなどの要因も含めて考えていく必要があると考えます。

 抄録も紹介します。

 抄録
 当院における便秘と裂肛に関して、男女の差を比較検討した。
 【対象】平成712月から平成244月までに当院を受診した患者数は25928人(男性13163人、女性12765人、平均年齢51.9歳)で、カルテに便秘症という診断名が付いた患者は3196人(男性1093人、女性2103人、平均年齢56.9歳)、裂肛は4823人(男性1919人、女性2904人、平均年齢43.1歳)、裂肛手術は1480人(男性549人、女性1480人、平均年齢42.1歳)で、これらを対象とした。  【方法】対象を10歳以下(A群)、1120歳以下(B群)、2130歳以下(C群)、3140歳以下(D群)、4150歳以下(E群)、5160歳以下(F群)、6170歳以下(G群)、7180歳以下(H群)、81歳以上(I群)の9群に分け男女の差を便秘、裂肛、裂肛手術に関して比較検討した。【結果】患者総数には男女差は認めなかった。便秘では、男性では年齢と共に人数は増加し、H群でピークになった。女性は二峰性で、C群、D群で一端ピークを認め、E群以降、男性と同様に年齢と共に増加し、H群でピークとなった。裂肛では男女ともほぼ同じ傾向を認め、男性ではD群に、女性ではC群にピークを認めた。裂肛手術では女性では裂肛同様にC群でピークを認め、年齢と共に減少した。男性では裂肛のピークとはややずれ、E群にピークを認め、年齢と共に減少した。だた、減少の程度は、男性で緩徐であった。
 【まとめ】便秘に関しては、女性のC群、D群を除くと、男女とも年齢と共に増加した。このことは、加齢とともに腸管の善導運動の低下や、食事の摂取量、運動量の減少など男女ともに共通した原因があると思われる。また女性のC群、D群の便秘は、女性特有でやはり黄体ホルモンによる腸管運動の抑制などが関与していると思われる。便秘と裂肛の関係をみると、年齢と共に便秘は増加する傾向にあるが、これに一致して裂肛が増えていない。このことは、年齢とともに便秘が増えるのに反して、内肛門括約筋の緊張が低下していくことにもあると思われる。やはり、裂肛の原因を考える際に便秘だけでなく、内肛門括約筋の緊張の強さなど様々な要因を合わせて考え検討する必要がある。

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