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2018.02.14

内痔核に対する5%フェノールアーモンドオイルと硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸液との効果の比較(第62回日本大腸肛門病学会)

 今回は、パオスクレ(5%フェノールアーモンドオイル)とジオン(硫酸アルミニウムカリウムタンニン酸水溶液という痔核硬化剤を使った、第3度の内痔核に対しての痔核硬化療法の効果について比較検討した発表を紹介します。
 少し古い発表です。その時点でのそれぞれの痔核硬化剤の評価です。
 結論は、今現在もそうですが、第3度の内痔核、排便時に内痔核が肛門の外に出てきて押し込む程度の内痔核に対してはジオンによる四段階注射法での痔核硬化療法が有効です。でも比較的小さな内痔核で、第3度の内痔核では、パオスクレーによる痔核硬化療法をある程度有効です。パオスクレーによる痔核硬化療法は麻酔をすることなく、外来での治療が可能です。第3度以上の内痔核に対しての一つの治療方法としての選択肢になると思います。
 内痔核に対してのパオスクレーによる痔核硬化療法については、本ページの「痔の治療」にも詳しく紹介してあります。こちらもご覧ください。

発表内容

 5%フェノールアーモンドオイル、以下PAOによる痔核硬化療法の適応は第1度や第2度の内痔核、特に出血に対して有効と言われています。我々はこれまでも、第3度以上の内痔核に対してもPAOによる痔核硬化療法を行ってきました。最近では、第3度以上の内痔核に対しては、硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸水溶液による痔核硬化療法、以下ALTA療法を施行するようになって来ました。
 今回、第3度以上の内痔核に対して行ったPAOによる痔核硬化療法とALTA療法について比較検討しました。
 対象は、第3度以上の内痔核に痔核硬化療法施行した症例としました。PAOによる痔核硬化療法を施行した症例は278例、男性162例、女性116例、平均年齢60.8歳。ALTA療法を施行した症例は109例、男性82例、女性27例、平均年齢55.6歳でした。
 PAOによる痔核硬化療法は無麻酔下に施行し、筒型の肛門鏡を用いて1箇所の内痔核に対して内痔核根部と内痔核に、ALTA療法での第1段階と第2、第3段階の部分に計5mlPAOを局注しました。3箇所の場合は総量15mlを局注しました。
 ALTA療法は1%塩酸プロカインによる局所麻酔下に四段階注射法で施行しました。いずれの痔核硬化療法も左側臥位で施行しました。
 平成19412日現在での非再発率をKaplan-Meier法で計算しログランク検定で比較検討しました。
 結果ですが、ALTA療法の観察期間は最長268日と短いですが、ALTA療法を施行した症例では再発は認めず、非再発率は100%であったのに対して、PAOによる痔核硬化療法の非再発率は43.5%と有意にALTA療法の非再発率が高値でした。
 ただ、PAOによる痔核硬化療法でもALTA療法での最長観察期間である268日の時点では、非再発率が82.7%であり、また、364日、約1年でも非再発率が77.3%1年までは比較的有効な治療法だと思います。
 第3度以上の内痔核に対する痔核硬化療法は、再発面からALTA療法のほうがPAOによる痔核硬化療法より優れており、非再発率は有意に高値でした。ただ、PAOによる痔核硬化療法でも非再発率は286日で82.7%、約1年では77.3%と、施行後1年までをみると比較的有効な治療法だと考えます。PAOによる痔核硬化療法は、無麻酔下に施行することができ、また比較的副作用も少ないため、外来通院での治療が可能です。また前回の大腸肛門病学会でも発表しましたが、第3度以上の内痔核に対してPAOによる痔核硬化療法を施行し、再発した症例でも、何回か痔核硬化療法を施行していく間に、内痔核の程度が軽快していく症例もありました。このことからも第3度以上の内痔核に対しての第1選択はALTA療法がよいと考えますが、PAOによる痔核硬化療法も治療法の一つの選択肢になると考えます。
 ALTA療法に関しては、まだ観察期間が短いため、非再発率がどのように推移していくか今後のfollow upが必要です。

抄録を紹介します。

抄録

 一般に5%フェノールアーモンドオイル(以下PAO)による痔核硬化療法の適応は第1度や第2度の内痔核といわれているが、我々は第3度以上の内痔核に対してもPAOによる痔核硬化療法を行ってきた。最近では硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸液による痔核硬化療法(以下ALTA療法)の出現により、第3度以上の内痔核に対して痔核硬化療法を施行する場合はALTA療法を施行するようになってきた。今回ALTA療法とPAOによる痔核硬化療法とを比較検討した。
【対象】第3度以上の内痔核に対してPAOによる痔核硬化療法例278例(男性162例、女性116例、平均年令60.8才)と、ALTA療法施行例109例(男性82例、女性27例、平均年令55.6才)を対象とした。【方法】PAOによる痔核硬化療法は無麻酔下に、ALTA療法は1%塩酸プロカインによる局所麻酔下に施行した。H19412日現在での非再発率をKaplan-Meier法で計算し、それぞれの痔核硬化療法の第3度以上の内痔核に対する効果を再発面から比較検討した(ログランク検定)。
【結果】平均follow-up期間はPAOによる痔核硬化療法が1248.0±981.3日、ALTA療法によるものが142.6±79.0日であった。PAOによる痔核硬化療法の非再発率は43.5%であり、ALTA療法の非再発率100%と比較して統計学的に有意に低値であった(P=0.0105)。ただし、ALTA療法は経過観察期間が最長でも286日であることから、PAOによる痔核硬化療法において286日に注目してみると、再発症例は48例(17.3%)であり、非再発率は280日で83.0%、364日で77.3%であった。
【まとめ】第3度以上の内痔核に対する痔核硬化療法は、再発面からALTA療法のほうがPAOより優れていた。ただし、ALTA療法に関しては現時点で経過観察期間が不十分であり、今後も十分follow-upしていく必要がある。

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