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2018.06.10

痔核根治術後の疼痛についてー特に術前最大静止圧による術後疼痛の比較検討ー日本大腸肛門病学会雑誌 第53巻 第4号 2000)

 今回は痔核根治術後の痛みに関して、日本大腸肛門病学会雑誌に投稿し掲載された論文を紹介します。
 以前、このことに関しての学会発表の内容を紹介しましたが、今回はそれを論文にしたものを紹介します。
 以前から、肛門の診察の際の指診で肛門のしまりが強い患者さんほど術後の痛みが強いのではないかという、手術をする際の経験的な感触がありました。このことを科学的に証明しようと、肛門のしまり、内肛門括約筋のしまりを反映する最大肛門静止圧を測定して。その値と術後の痛みにつて比較して検討した論文です。結果は、やはり最大肛門静止圧が高い患者さん、つまり肛門のしまりが強い患者さんほど痛みが強いという結果です。肛門のしまりが強い患者さんは、肛門の緊張をとってあげる処置を加えることで、術後の痛みが楽になるという内容です。2000年の論文で少し古い論文ですが、今の手術の後の痛みをとる基本となる内容を書いた論文です。参考になればと思います。

痔核根治術後の疼痛についてー特に術前最大肛門静止圧による術後疼痛の比較検討ー
日本大腸肛門病学会雑誌 第53巻第4号 241-243 2000

抄録

痔核根治術後の疼痛について、術前最大肛門静止圧との関係を検討した。[対象]平成10年9月から平成11年3月までに痔核根治術を施行した146例を対象とした。[方法]術後3時間後の疼痛の程度を「痛くない」、「少し痛い」、「痛い」、「とても痛い」に分類し、疼痛の程度と最大肛門静止圧との関係を比較検討した。[結果]①術前の最大肛門静止圧について、「痛くない」群(88.5±36.5mmHg)と「痛い」群(118.9±38.0mmHg)との間で有意差を認めた(p=0.016)。②術前最大肛門静止圧が100mmHg未満の群と以上の群との間で、術後3時間後の疼痛に有意差を認めた(p=0.012)。以上より術前最大肛門静止圧が高い症例では、術後疼痛の出現する可能性が高く、内圧を下げる工夫で、さらに術後の疼痛を緩和できると考える。

論文

       はじめに

 内痔核に対する痔核根治術術後の疼痛は、手術を受ける患者にとって一番の不安であったり、また手術に迷う最も大きな原因である。当院のアンケートでも手術にふみきれない一番の原因は「術後の疼痛が心配」(70.5%)であった。最近、手術術式の進歩や、術後の処置などでその痛みは緩和されてきているが、避けては通れない問題である。同じ術式を同一術者で施行しても患者個々で、疼痛の程度は一定していない。肛門内圧(静止圧)が正常より高い症例のなかに術後強度疼痛の発生頻度が有意に高かった1)との報告があるが、術前から術後の疼痛について簡単に、しかも客観的に予想できる方法があるかどうかについて注目し、術前の最大肛門静止圧と術後の疼痛との関係を詳細に検討した。

      対象および方法

 対象は、平成10年9月から平成11年3月までに術前に最大肛門静止圧を測定し、痔核根治術を施行した146例(男性76例、女性70例、平均年令48.3才)である。方法は、術前に最大肛門静止圧を測定、術後3時間後に疼痛の有無を「痛くない」、「少し痛い」、「痛む」、「とても痛い」の4段階に分類し、疼痛の程度と最大肛門静止圧との関係を比較検討した。当院では全例1%プロカインによる局所麻酔下に手術を施行しており、麻酔の影響がなくなった時点で比較する必要があること。また、術直後と術後3時間後に疼痛の有無にかかわらず「先取り鎮痛」及び術後の疼痛緩和の目的で全例インドメタシン座薬50mgを挿入している。また鎮痛剤の内服は術後3時間後以降に、疼痛の有無によって内服をしてもいらっている。したがって、比較する際に条件を同じにする意味で、術後3時間後の疼痛を比較検討した。
 痔核根治術施行部位数と術後の疼痛との関係についても検討した。肛門内圧検査にはコニスバーグ社のカテーテル型圧力トランスデューサー(Model No.P31)を用い、被験者を左側臥位にして肛門縁よりトランスデユーサーを挿入し、引き抜きで内圧を測定した。手術は同一術者がおこない、術式は半閉鎖術式で行った。

        結果

 術後3時間後の疼痛の程度はそれぞれ、「痛くない」が85例(58.2%)、「少し痛い」40例(27.4%)、「痛む」20例(13.7%)、「とても痛い」1例(0.7%)であった。
1)痔核根治術施行部位数と術後3時間後の疼痛
 痔核根治術施行部位数と術後疼痛の関係は、「痛くない」、「少し痛い」、「痛む」、「とても痛い」の順に1箇所ではそれぞれ31例、14例、3例、0例。2箇所では、35例、17例、10例、1例。3箇所では、19例、9例、7例、0例であり、それぞれの群の間にはχ検定で有意差は認められなかった。
2)術前最大肛門静止圧と術後3時間後の疼痛
 疼痛の程度と術前最大肛門静止圧との関係は、「痛くない」と答えた患者の術前最大静止圧のは88.5±36.5mmHgで、「少し痛い」100.9±38.0mmHg、「痛む」118.9±38.0mmHg、「とても痛い」160mmHgであった。統計学的検討(t検定)では、「痛くない」と「少し痛い」および、「少し痛い」と「痛む」との間には有意差を認めなかったが、「痛くない」と「痛む」との間には有意差を認めた(p=0.016)。
 また、最大肛門静止圧が100mmHg未満(85例)と100mmHg以上(61例)とで比較すると、100mmHg未満では、「痛くない」57例(67.1%)、「少し痛い」22例(25.9%)、「痛む」6例(7.0%)、「とても痛い」0例(0%)に対し、100mmHg以上では、「痛くない」28例(45.9%)、「少し痛い」18例(29.5%)、「痛む」14例(23.0%)、「とても痛い」1例(1.6%)で、100mmHg未満の群のほうが100mmHg以上の群より有意に術後の疼痛が軽度であった。(χ検定、p=0.0126)

         考察

 痔核根治術後の疼痛は、手術術式の進歩や術後の創処置、管理の発達などで緩和されてきている。しかしながら、この術後の疼痛対策は痔核根治術を施行する上でさけてはとおれない問題である。同じ術者が同じように手術を施行しても、術後の疼痛は患者個々でまちまちである。また手術を施行するうえで、患者が一番心配しているのもこの術後の疼痛である。実際当院で、「手術をするにあたってなにが一番迷った原因でしたか?」のアンケートをとったが、回答のうち70.1%はやはり術後の疼痛であった。このことからも術前から、術後の疼痛の程度を客観的に把握できる指標が存在するか否かについては注目すべきである。術前の肛門最大静止圧が正常より高い症例に、術後強度疼痛を認めることが多いと報告しているものもあり1)、今回術前の肛門最大静止圧と術後疼痛、特に術後3時間後の疼痛について比較検討した。また、痔核根治術施行部位数と術後の疼痛との間に最大肛門静止圧以外に関連があるかについても検討した。
 まず、術後3時間後の疼痛と、痔核根治術施行部位との関係をみると、1箇所、2箇所、3箇所のいずれも痛みの程度の分布は同じで、それぞれの群の間に有意差は認めなかった。当初術手術施行部位が少ないほど術後の痛みが軽度であると考えていたが、術後3時間後の痛みは、施行部位数とは関係がないことが判明した。ただ排便時の痛みに関しては、手術施行部位数が少ないほうが軽度である印象はあり、今後の検討が必要である。
 術後3時間後の疼痛の程度と術前最大肛門静止圧との関係をみてみると、「痛くない」と答えた患者の術前最大肛門静止圧は88.5±36.5mmHgであるのに対して、「痛む」と答えた患者の術前最大肛門静止圧は118.9±38.0mmHgで、それぞれの群の間では有意差を認めた。したがって、肛門の緊張も術後の疼痛に影響を及ぼす一つの要因と考えられる。
 次に術前の最大肛門静止圧が100mmHg未満の群と100以上の群との間で術後3時間後の疼痛について比較した。これは術前に術後の疼痛の程度を予測するために比較した。内圧を100mmHgで分けたのは、最大肛門静止圧の正常値は各施設によって多少異なるが、正常値の上限が100mmHg以下が多いので、2),3),4)これをもとに2群に分けて比較した。結果は、100mmHg未満では、「痛くない」と答えた症例が多かった。このことから術前の最大肛門静止圧が100mmHgより高い症例では術後の痛みが出現する可能性が高いことが示唆される。
 以上より、術後3時間後の疼痛は痔核根治術を施行した部位の数ではなく、最大肛門静止圧が深くかかわっていることが考えられた。肛門内圧の高低ですべて痛みの程度が解るわけではないが、術前に最大肛門静止圧を測定することで、ある程度術後の疼痛を予測することができることは明らかである。術前の最大肛門静止圧が、正常より高い症例(100mmHg以上)では、術後の疼痛の出現する可能性が高いので、内圧の高い症例に対してどう対処していくかが今後の問題となる。このような症例に対して、消炎鎮痛剤などによる「先取り鎮痛」を考慮したり、術前のストレッチングを十分に行い、術後の過度の括約筋の緊張を予防する必要があると考える。また最近、裂肛に対してニトログリセリン軟膏を使用することで、内肛門括約筋の緊張をとり、内圧を下げることで治療する方法や5)、ボツリヌス毒素を肛門部に局注することで、これもまた内肛門括約筋の緊張をとり裂肛を治療する方法が行われてきている。6)これらはいずれも内肛門括約筋の緊張をとる作用があり、術前の最大肛門静止圧を下げる効果がある。今回の我々の結果を考慮すると、最大肛門静止圧が術前に高い症例では、これらの方法を用いることが有効と考えられる。

 

                文献

1)辻 順行,高野正博,黒水丈次:痔核術後の疼痛の解析と対策.日本大腸肛門病会  誌 525195231999
2)河 一京:直腸肛門内圧同調 Videodefecography による排便障害の検討ー              Rectoceleを中心に.日本大腸肛門病会誌 482893001995
3)Jen-Kou LinAnal Manometric Studies in Hemorrhoids and Anal Fissures.Dis      Colon Rectum 32 839-842,1989
4)M.Pescatori,G.Maria,G.Anastasio,et alAnal Manometry Improves the Outocome of Surgery For Fistula-in-Ano.Dis Colon Rectum 32588-592,1989
5)岩垂純一:裂肛の病態と、その治療:最近の知見を中心に.日本大腸肛門病会誌   50108910951997
6)D.Gui,E.Cassetta,G.Anastasio,et alBotulinum toxin for chronic anal fissure.THE         LANCET 3441127-1128,1994

 索引用語:内痔核、術後疼痛、最大肛門静止圧

 

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